片腕のピアニスト
1年前という事は、小学2年生のとき。
しかも、そいつの親が亡くなってから12ヶ月しかたってない。
子供ながらに大人びた雰囲気を放っているのは、辛い経験のせいなのかもしれない。
きっと、俺の辛さとは比べものにならないくらい悲しかっただろう。
「…だからね。お兄さんには生きてて欲しいんだぁ。」
じわっと目頭を熱くする何かを、必死にこらえる。
「それとね、起訴?だったっけ。
それをしないのもお兄さんのためなんだよ?
僕は、そんな方法でこの足の代わりになって欲しいとも思わない。」
ごめん…ごめんな……。
俺の足と入れ替えられりゃ…。
「………そろそろいいかな。
…結構ためたけど、もう終わりにしようか。お兄さん。」
……………………………え?
「お兄さん。僕はこれから酷いこというよ。
これはきっと、これからお兄さんをすごく苦しめる。」
いいよ。それが俺の償いになるのなら。
これまでの最低な俺をそれで許してもらえるなら。
…ただ、顔を見たままその言葉を受ける自信がなく、足を組み替え、ドアに向かって俯いた。
「………………お兄さん。
…僕の将来の夢、サッカー選手だったんだぁ。」
その言葉の重みがまぶたにのしかかって、堪えていたものが溢れ出した。
自分の犯してしまった罪の重さと、そいつの将来を消し去ってしまった自分の愚かさを呪った。
嗚咽がそいつに聞こえないうちに、俺は白い病室をでた。