片腕のピアニスト
ただ、それはタクシー運転手に失礼だぞ。
まあ、運転してるのはシゲだが。
俺は家の力を使うのが嫌いだから嫌だと言ったんだが、シゲがどうしてもというからシゲが運転している。
シゲは、親の事を一切口に出さなかった。
俺が少し寝たフリをしても、独り言でさえ零さなかった。
病院から1時間ほど(考えるのがめんどくさかったが、このぐらいだろう)
特に話し込む訳でもなく、久しぶりの2人ぼっちを噛み締めたころ。
巨大な門の前に着いた。
秘密保護のため、ここを選んだのか。
やはり、俺の知らないところで親の名前は使われるのだろう。
家の名前を使えば、俺の居場所を隠すのなんて簡単。
まして、寮生活に加え、この飄々とそびえ立つ門。
俺は、ここに隔離される。
自分で選んだ道だ。
俺は、このクソつまらない学校を適当に過ごせばゲームクリア。
簡単じゃないか。