片腕のピアニスト
知らなかったんだ
都合良いかもしれないけど
あれが酔った俺の見た幻覚だと教えてほしかった。
「実はね……。…君が事故を起こした時に、……その…。」
「……いい。…俺が悪かったんだ。
………はっきり言ってくれ。」
言葉を濁す主治医を、俺はやんわりと急かす。
「………男の子が、巻き込まれたんだ。」
…頭に、強い衝撃が走った様な気がした。
看護師2人と主治医。
3対1で俺が責められている気がして、早急にこの場から逃げ出したくなった。
でも、それは許されない。
「小学3年生の男の子でね?
…君としょうと………ぶつかった時に足を怪我したんだ。」
白衣の人は、衝突と言おうとして言い直した。
そんなの、いいのに。
俺が自分勝手に暴走して、それを責められて、逃げてきた結果なんだから。
年齢を聞いて、目を見開いた。
足を怪我したとは、どのぐらいなんだろうか。
俺は、俺の半分ぐらいしか生きてない男の子の自由を奪ってしまったのか。
兎に角、それだけが気になった。
「……その子に…合わせて下さい…。」
気がついたら、俺は主治医の目を真っ直ぐ見てそう言っていた。