生徒会長が私を好きな理由
「仕事で帰りが遅くなる事が多いからお前のことが心配だと言っていた。ましてや生徒会に入って帰るのが遅くなるから余計だと」

「そう…」


確かに生徒会になってから帰る時間は遅くなったけど、以前も泉や由愛と寄り道して帰ってたから帰宅時間は対して変わらない。

でも1人で帰るなんてことは高校に入ってからなかったから、薄暗くなるとちょっと怖いとは思ってたんだけどね…





「ありがとう。助かるよ」

「礼なら母親に言え。別に俺の好意でやってる訳じゃない」


笑顔で素直にお礼を言ったのに一柳くんはそっぽを向いてそう答える。




「あーそうでしたね。お礼を言う相手を間違えましたよーだっ」


本当に可愛くないんだから!

ここは「うん」とか言っとけばいい場面でしょう?これだから顔がいいヤツは…





「でもまぁ…この時間に女が1人で帰るのはさすがに俺も危ないと思うけど。だからお前に母親に言われてなくても家まで送ってやらなくもない」


意外な発言をする一柳くんに、私はキョトンとして肩を落す。


それって…もしお母さんに頼まれてなくても、私を送るつもりだったってこと?

あれ…また急に優しい。本当調子狂うなぁ。





「ありがと…」


私は聞こえるか聞こえないかわからない位の声でボソッとお礼を言った。一柳くんは何も言わなかった。

そして2、3分で私のアパートに到着。車から降りて一柳くんの座っている方に回り込むと後部座席の窓が開いた。






「送ってくれてありがとう」


また否定的な事言われるのはわかってるけど、送ってくれたのは事実なので私は人としてちゃんとお礼を言いますよ!




「ああ」


あれ?今回は素直…

本当何なのよあんた…掴めない人だな。





「これ。目を通しておけ」

「え…」


一柳くんが私に差し出したのは3枚程のプリントで、左上をホチキスでとめてあるもの。その場でそれをペラペラとめくると、それは今年の体育祭のイメージやコンセプトが書いてあった。




「これって…さっき生徒会で話し合ってて全然決まらなかった内容じゃん。ここまで考えがまとまってあったならさっき皆に見せれば良かったのに…」


まだざっとしか見てないけどこれすごくいいと思うし楽しそう。

私は元々スポーツ苦手で体育祭なんて興味ないけど、ちょっとワクワクしてきちゃった…




「皆の意見も聞いた方がいいと思ったから今日はあえて出さなかった。さっきの皆の意見もそこにプラスした物を今日中に作成して、明日の放課後提案してみようと思う」

「そっか」

「提案する前にお前の評価を聞きたかった。一応副会長だし」


一柳くんは私から目をそらして言った。


副会長は一番責任がないなんて言ってたのに…さり気なくちゃんと仲間に入れてくれてる。嬉しいな…
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