生徒会長が私を好きな理由
白学の体育祭はどんな感じなのかな?きっとすごいプログラムでお金をかけてそうだけど…




「副会長がしっかりしてれば俺の仕事も少しは楽になるのにな」


隙をついたように嫌味をいう一柳くんに、私はムッとしてとっさに反論する。




「これでも一生懸命やってるんだからねっ」

「はいはい。ほら俺達も第二体育館に行ってコスプレを選ぶぞ」

「…そうだった」


生徒会の私達も明日はコスプレをするんだった。組の色別にイメージした衣装を用意したらしいけど、早く行かないといいやつが無くなっちゃう…

私は赤組で海音と本間くんと同じで、一柳くんと田村くんは白組だったっけ?


自分のも気になるけど…一柳くんはどんな物を選ぶんだろう…




「何見てんだ」

「ぅっ」


2人で体育館に向かって歩きながら、私がチラチラ見ているのに気づい一柳くんが私の頭をコツンと叩いた。


最近は普通に一柳くんと話せてる気がする。主に生徒会の話が多いけど日に日に距離が縮まってるのは事実…

1日が過ぎる度に私の気持ちもゆっくり変化していってる気がする。どんどんどんどん一柳くんに惹かれていってるんだ…

この気持ちはもう止められないよ…









がやがや



「わ、すごい…」


第二体育館に着くと中はかなり盛り上がっていて、生徒達はそれぞれ自分で選んだコスプレを身にまとっていた。





「亜香莉!」

「ぅわっ」


突然現れた泉は巫女さんの衣装を着ていて、その場から私の手を引っ張って離れる。振り返って一柳くんの事を気にしつつも私は泉に話しかけた。





「巫女さんのコスプレ似合ってるじゃん!」

「当たり前でしょ♪」

「由愛は?」


泉と一緒にいると思ってたのに…




「由愛は白組だからあっちにいるよ。それより…あんた早く自分のコスプレ選びなさいよ!いいやつ無くなっちゃうよ?」

「そうだよね!」

「同じ組だから、本当は亜香莉とコスプレ選びたかったのに一柳くんと話してたから気使って体育館に1人で来たのぉ~でも少しくらいあんたを借りてもいいわよね?」


じーっと私の顔を見る泉に私は慌てて言葉を返した。





「そ、そんな気を使わなくても大丈夫だよ!」


ってゆうか、逆にそんなに気を使ってくれてたんだ…でも一柳くんと話してるところを見られてたと思うと恥ずかしい。





「なーんか、一柳くんに亜香莉を取られちゃったみたいで嫌だけど親友の恋は応援しなきゃね!」

「取られたって付き合ってるわけじゃないし…」

「男に夢中になったならもう同じようなもんじゃない」


まるで恋多き大人の女性みたいな口調で言う泉が、とても遠い存在に見えて同時に尊敬すら覚える。






「ま、それは置いておいて。今はコスプレを選ぶのが先!いいやつはキープしておいてあげようと思ったんだけど亜香莉の好みもあると思ってさ…」

「ありがと。大丈夫…余ってるやつでい………」


泉とそんな話をしながらコスプレ衣装が並べられているハンガーラックに近づくと、1つだけポツンとかけられている衣装を発見。

とりあえずそれを手に取って見てみると…






「なにこれ…」

「ぷっ…」


手に取ったその衣装は、だるまをイメージしたコスチュームでとても可愛いとは言えないものだった。

丸型の赤い着ぐるみタイプの服には黒い筆字で「合格」という刺繍がしてあり、頭にかぶる帽子にはだるまの顔…それを見た泉は思わず吹き出して笑った。





「ようは売れ残りだよねこれ…」


赤組の衣装の中で一番人気のなかったやつということか…ちょっと出遅れただけなのにこんなの酷すぎっ




「と、とりあえず着てみなよ!着てみたらかわいいかもしれないよ?ね?」

「…」


泉に背中を押されて試着室に行き、とりあえずだるまの衣装を試着した私だったが…





「くっ……ぶぶ」


だるまになった私を見て泉が笑いをこらえている。巫女さんのかわいい衣装を着てる泉がとても羨ましく見えて、私は今にも泣きそうだ。




「あーいたいた!ずっと探し……ぷっ、アッハハハハ♪」


すると試着室に由愛が入ってきて、私のだるまの衣装を見るなり爆笑している。白組の由愛は黒い帽子のついた雪だるまの衣装を着ていて、同じだるまでも別格にかわいくて余計に泣きそうになった。
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