生徒会長が私を好きな理由
がやがや

翌日。天気は雲ひとつない晴天。気温も過ごしやすく体を動かすと少し汗ばむ程度で問題なし。

そんな日に、我がつくば高等学校の生まれ変わった体育祭がもうすぐ開かれようとしている。





「亜香莉~!」

「海音!」


朝早く学校に登校すると、コスプレ姿の海音と門の前でちょうど行き合う。

昨夜は泉の家に由愛と泊まり生徒会の仕事がある私は、先に1人で学校に向かった。きっと今頃は泉と由愛はコスプレの支度で忙しいことだろう…





「おはよう!海音かわいい♪チューリップの衣装だねっ」


海音の着ている衣装は赤いチューリップ型の着ぐるみで、頭には花びらをモチーフにしたような帽子をかぶっていた。




「そお?ありがとう!あれ?亜香莉はまだ衣装着ないの?」

「え…あーうん!私のすぐ着れるから後ででもいいかなって」


さすがにだるまで外を歩きたくないから、学校のジャージで来ちゃったよ…




「おはようございます!」

「よお!」


すると本間くんと田村くんとも行き合い、2人もコスプレをしていてとても気合いが入っていた。ちなみに本間くんはタコで田村くんは白い全身タイツ姿…




「今日は頑張ろうな!」

「うん!今年は体育祭実行委員がいないから代りに生徒会が全部やらないといけないしね」


田村くんにガッツポーズにされた私は、何度も頷きながら笑顔を返した。


今年は実行委員やってくれる人がいなかったけど…来年こそはいてくれたらいいな。その為にも今日の体育祭は頑張らなくちゃね!





「あ。あれ会長じゃない?」

「え?」


海音が門から校庭の方を指差してそっちの方向に目をやると、先生と話す一柳くんの姿が見えた。

一柳くんももう昨日の白衣姿になっていて、今日はおまけに眼鏡までかけていてよりカッコイイ。



め、眼鏡…!

それは反則ですよっ…


思わず見とれていると、一柳くんが私達に気づいてこっちに近づいて来る。




「…はよ」


挨拶をする一柳くんに私達も「おはよう」と返す。近くで見る眼鏡姿の一柳くんにドキドキして顔を見られない…




「会長眼鏡かけてるー♪似合うね!」

「そうか?俺は必要ないと言ったんだが岩田がどうしてもって言うから仕方なくな…」


海音にそう返すと一柳くんはうっとうしそうに眼鏡をくいと上げた。その瞬間一柳くんと目が合い、私は何故か目をそらしてしまう。


なんか緊張して目をそらしてしまった…絶対変に思われたよね。





「日野」

「は、はい」

「早く着替えないと時間がなくなるぞ。今日は忙しいんだし」


ジャージを着ている私を見て、一柳くんは厳しい顔をして言った。眼鏡をかけているからか一柳くんの顔はいつも以上に怖く見える。




「まだ少し時間あるし私も手伝うから着替えちゃお!」

「うん…ありがとう」


気を使うように言って私の腕を引っ張る海音と私は、下駄箱から一番近いトイレに入り持ってきただるまの衣装に着替えた。





「手伝ってもらっちゃってごめんね…」

「いいのいいの♪生徒会の仲間同士なんだしお互い様だよん」


だるまの着ぐるみを着ると、海音は後ろのファスナーをしめてくれる。




「本当はだるまの衣装なんて着たくなかったからジャージで登校したんだ…これ着て体育祭に出るなんて憂鬱だよ」


他の子は皆かわいいコスプレばかりだし、それに一柳くんも見てるのにさ…

こっちで用意した物じゃなくても私物があればそれでいいらしいけど、私コスプレなんて持ってないし代用出来そうな物もなかったしな…こんな事なら最初にキープしておけば良かったよ。





「でも会長は喜んでるみたいだよ?昨日の放課後に亜香莉のだるま姿の写メ見せてくれたしね」

「ええ!」


なにその情報!?


後ろで着ぐるみのホコリを払ってくれている海音は、ニシシと笑いながら続ける。





「亜香莉が生徒会室に来る前に私と本間くんに写メ見せてくれたんだよ。「明日の楽しみが増えたな」なんて言ってクスクス笑ってた」

「なにそれ…」
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