生徒会長が私を好きな理由
嫌がる私を見て生徒会メンバーが大笑いする。一柳くんに至っては少し意地悪そうに微笑んでいたが、その場がとても明るくなった気がした。

これから体育祭だしなんだか皆で気合いを入れたみたいだね…すごくワクワクしてきた。こんな気持ちは初めてだよ。








「…すごい!」


1時間後。校庭には生徒達が集まって来て、皆コスプレ衣装に身を包んでいた。それぞれクオリティが高くて私はテント下からそれを見ながらただただ驚いている。

去年とは大違いの光景だな。純粋にコスプレを楽しんでいる人と罰ゲームで負けたくないから張り切っている人…目的はどうであれ生徒達が気合いが入ってるのが嬉しい。





「亜香莉ー!」

「泉!由愛!」


すると登校してきた泉と由愛がテント下にやって来て、私に笑顔で手を振って来た。私は生徒会のメンバーから離れ2人に近づく。





「おはよ~絶好の体育祭日和ね♪」

「うん!晴れて良かったよ!それより2人共かわいいね!」


2人のコスプレ姿は、昨日よりも本格的でとても様になっていた。

泉の巫女さんは長くて綺麗な黒髪の毛をストレートにして、前髪は真っ直ぐにとかしている。いつも泉はウェーブのかかっている髪なのに今日のストレートの髪はとても新鮮だ。

由愛はメイクをいつもよりも濃いめにしていてチークは頬の全体をピンク色に染めている為、雪だるまの衣装がよりかわいさがupしているように見えた。





「私達も気合い入れないとね!」

「そうだよ!なんせ亜香莉が体育祭の実行委員もやるんでしょ?盛り上げるから私達に任せてよ!」

「泉…由愛…」


目を潤ませながら2人に抱きつくと、今日までの色々な苦労が蘇り本当に泣きそうになって来た。





「あ、私…まだ仕事があるから行くね!」

「わかった!応援席にいるから」

「うん!」


生徒会の仕事を思い出し友達から離れテントに戻ると、プログラムを見返している一柳くんがこっちを見てくる。白衣姿の一柳くんは何度見てもときめいてしまう…





カチャ


また隙をついたように私のだるま姿を写真に撮る一柳くんは、撮った写真を見て「ぷ」っと笑った。




「だからそれやめてってば!」


こんな姿を撮られるのすごく恥ずかしいんだから!一柳くんのスマホにこんな格好をした私の写真があると思うとそれだけで嫌だもん。





「手が勝手に動くって言ったろ。それと…お前はもう応援席に行ってもいいぞ」

「どうして?」


ポケットにスマホをしまう一柳くんは、またプログラムに目を向けながら言った。

実行委員だからここにいて仕事やらなきゃいけないんじゃないの?私は道具係だから競技ごとに道具の出し入れしなきゃだし。




「応援席にいるお前の写真が撮りたいだけだよ」

「は?なにそれ!?」

「いいから早くいけよ。お前がここにいても邪魔だ」


軽く手で払うようにあしらわれた私はとぼとぼと応援席に行き泉を見つけると、隣の椅子に座った。





「あれ?どーしたの?生徒会は?」


私に気づいた泉は「早いね」と言って首を傾げる。私は午前中は生徒会でテントの方にいる事を事前に泉に伝えていたし、私が応援席で体育祭に参加するのは午後からだと話していたからだ。




「会長に戻っていいとか言われた…写真撮りたいからって」

「は?写真??」


一柳くんのさっきのやり取りを泉に話す…




「いい感じではないか~この調子で行くところまでいきないよ♪」


私の肩に手を回して、ニヤニヤと笑いながら言う泉はどこか親父っぽい。


ま、嬉しいことではあるけどね。これもプラスに考えないと片想いなんてやってらんないよ…




「ーー…もうすぐ開会式が始まるので全校生徒はグラウンドに集まり整列して下さい」


すると一柳くんの声で放送がかかり、コスプレに身を包んだ生徒達はぞろぞろとグラウンドに出ていき整列すると体育祭の開会式が行われた。そして体育祭が幕を開け、第一競技がスタートする。





「いけーーー!」

「負けんなよー!!!」


罰ゲームをかけた体育祭は去年よりも盛り上がりを見せ、応援席はすごい事になっていた。




「すごいね!」

「これも亜香莉達のおかげだよ!成功して良かったね♪」

「うん!」


色々あったけど…頑張って良かった。学校生活でこんなに嬉しいと思った事は今までなかったよ…




「ーー…次は2年男子による100m走です」


その放送を聞いた私のボルテージは一気に上がり、すぐに入場口の方に目を向ける。


2年男子ってことは一柳くんも出場するんだよね!違う組だけど応援しちゃうよっ





「よーい………」


パンッ



2年男子の徒競走がスタートすると、より一層盛り上がりを見せていた。普段さえないタイプの男子が意外と足が速かったりして、今日はヒーローになっていたりしている。




「あ!次一柳くん!」

「ホント!?」


泉が私の肩を叩いて教えてくれて、スタートラインの方を見ると次は一柳くんの番。パンッとピストルの音が鳴ると、ギャラリーにいる女子達のキャーという声が響いた。





「めっちゃ速いじゃん!ぶっちぎり!」


白衣を着ているにも関わらず一柳くんは余裕の走りを見せて、見事1位を獲得。泉が興奮する中、私は心の中で「やったー!」と叫んでいると…






「悠生ー!さすがね~」


保護者席で1人目立っている女子が、一柳くんに声援を送っているのが見えた。よく目を凝らして見ると…





「九条さんだ…」


白のスパンコールのついたキラキラのド派手な衣装に身を包む九条さんは、白のメガホンで一柳くんを応援していた。
< 31 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop