生徒会長が私を好きな理由
「九条!?九条って例のおじゃま虫??」


目を細めて保護者のギャラリーの方を見る泉は、一瞬で怖い顔に変身する。泉の言葉に私は静かにコクリと頷いた。


九条さんが来てるなんて…全くの予想外。確かに保護者以外でも観覧は認められてるけど、親らしき人は誰1人いないから九条さんがかなり目立ちまくっている。





「あいつ…私が追い返してやるっ」

「泉…」


九条さんに向かって前のめりになり、今にも殴りかかりそうな泉を私は腰を押さえつけて止めた。


せっかく楽しみにしてた体育祭だったのに、九条さんが応援席にいると思うとやる気が失せる。

一柳くんは九条さんに目を向ける事なく、1位の列に並んでいるだけだからまだいいけど…あれでベタベタされたりしたら本当に嫌だなぁ。





「ーー…2年女子による借り物競争に参加する生徒は入場口に集合して下さい。」



「私らの出番だよ!絶対勝つわよ!!」

「う、うん…」


私達が出場する競技の出番が近づき放送がかかると、泉は今日1の気合いの入れようを見せた。突然に九条さんが現れたからか、より白組に負けたくない思いが強くなったみたい…

泉が張り切ってくれるのは嬉しいけど私は気が重いな。九条さんと一柳くんが見てる前で走るなんて嫌だ…





パンッ

パンパンッ



私の思いは虚しく2年女子の借り物競争は始まり、先頭の列から順に走り始めた。最後から2番目の列に並ぶ私は緊張しながら待つ。





「あ、由愛が走ってる…頑張れ!」


ちょうど走ってる列の中に由愛の姿が見えて、私は雪だるまの衣装で走りにくそうにしている後ろ姿に向かって応援する。




ジロ…



「うっ…」


すると、近くにいた同じ赤組の生徒達に睨まれ私はとっさに「す、すみません」と謝り小さくなる。




「気持ちはわかるけど今は白組を応援しちゃダメよ。皆罰ゲームを逃れる為に必死なんだから」

「…そっか」


同じクラスの女子にそう耳打ちされて、私は心の中で由愛を応援。私の願いが通じたのか由愛は1位でゴール。可愛らしい雪だるまはとても目立っていて皆に祝福されている。


さすが由愛!体育得意なだけあるな~

あ、次は泉が走る!



私の3列程前に並ぶ泉はスタートの合図が鳴るなり、華麗な走りを見て余裕の1位だった。巫女さん姿の泉は「ま、当然ね」みたいな得意げな顔をして他の生徒達にピースサインをしていた。



もうすぐ私の番…あー嫌だなぁ。


何気なくさっき九条さんのいたギャラリーに目を向けると、そこにはもう九条さんの姿はなかった。近くを何気なく探してみると実行委員が使うテントの中に九条さんがいた。

しかも音楽の調整をする一柳くんの隣にちゃっかり座り、お茶までもらってる!



信じられない…図々し過ぎる。

他の学校の体育祭をギャラリーから見るまでは理解出来るけど、実行委員の中に交じるなんてアリ!?

一柳くんは音響に夢中な感じだけど、そばにいる本間くんは九条さんの美しさに惚れ惚れしているようだし…海音に至ってはいい顔をしていない。田村くんはいないみたいだな…
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