生徒会長が私を好きな理由
「はぁ…」


ため息が口から漏れる。九条さんて一柳くんのことすごく好きなんだな…この前だって何がなんでも一柳くんを連れ戻す気満々だったし。あれはどこまで本気なんだろう…





「亜香莉!ほらっ」

「へ?」


ぼーっと考え事をしていたら、隣にいた生徒に腕を引っ張られた。気がつくと私のいる列はもう全員スタートラインにいて外れていたのは私だけ。




「すいません!」


慌ててラインに立つとすぐにスタートの合図が鳴り、私の列に並んだ生徒達は一斉に走り始める。






「ぷっ、なんだあれ」

「だるまが走ってるぜ」

「アハハハ」


走っている私を見て、応援席にいる生徒の笑い声が聞こえて来る。


恥ずかしい…そりゃあそうだよね。だるまが走ってたら私だって笑いますよ…

俯きながらひたすら走り続けゴールした私だったが、4位という微妙な順位で肩にリボンすらつけてもらえなかった。


ちらっとテント下に目を向けそうになったが、怖くてとても見られない。きっと一柳くんの隣には九条さんがいて、だるまの衣装を着た私を見て2人で笑ってるに決まってるんだから…






「亜香莉惜しかったね…もう少しで3位だったのに」


退場してすぐ泉と由愛に声をかけられて慰められる私は、疲れがどっと肩にのしかかった気がする。





「あ、だるまだ♪」


すると、通りすがりの数人の生徒達に笑われながら指を刺される私。





「あのだるまちゃんて副会長の子でしょー?」

「ウケる♪だるま副会長!」


だるまが巫女さんと雪だるまに励まされてるところを見て、生徒達はそんな言葉を次々と吐いていく中…今にも泣きそうになっている私を見て泉と由愛が慌ててフォローに回った。





「に、人気者だな亜香莉は~」

「だるまになったから生徒会の知名度も上がったんじゃない!?良かった良かった」


全然良くないよ…やっぱりだるまなんて着るんじゃなかった…こんなので有名になったってちっとも嬉しくないし。





「日野」


その時後ろから低くて少ししゃがれた声が降ってきて、私達3人はほぼ同時に振り返るとそこには一柳くんの姿が…

私は慌ててスイッチを入れて立ち直すと、一柳くんはしばらく私のだるま姿を見てまたぷっと吹き出した。





「どーぞ思う存分笑ってください。もう色んな人に笑われたので慣れました」


開き直る私に一柳くんはクスッと笑いすぐに真顔になると、いつもの手厳しそうな会長に戻る。






「そんなことより…競争で使う道具を出し入れするのを手伝ってくれないか」

「うん、もちろん」


私は元々道具係だったわけだし当然やりますよ。会長の指示でしばらく応援席にいたけど…





「そういえば…お前が応援席にいてくれたおかげでいい写真が撮れた」

「はい?」
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