生徒会長が私を好きな理由
2人の距離

白百合清蘭学園潜入

「ここのXを当てはめて…それで」


ここ数日の放課後の生徒会室は、数式やら単語やらという言葉が飛び交うようになっていた。

体育祭が終わると学校内は一気に期末テストモードに変わり、授業や生徒達は気を引き締め始める。生徒会も今は休み期間で、メンバー達もテストに向けそれぞれ勉強中。もちろん私もなんだけど…






「お前はもう一回小学校から出直して来い。基礎からなってないぞ」


頭を抱えながら参考書とにらめっこする私と、私を見て頭を抱える一柳くん。数学の計算の解き方がわからない私に、何度もアドバイスしてくれる一柳くんの開いている本はさっきからページが進んでいない。





「ちょっと休憩しようか。ジュースでも入れるね」

「僕も手伝います」


手を止めて立ち上がる海音と本間くんは、冷蔵庫からジュースを出してコップに人数分ついでいく。





「はぁ~」


勉強から少しでも解放された私は、大きなため息をついて体を伸ばした。こんなに勉強したのは高校に入って初めてのこと。

生徒会のメンバーで勉強会しようって事になって成績優秀の一柳くんが「教えてやってもいい」なんて言うから張り切ってお願いしたけど…すごいスパルタで思い描いていたラブな展開はなかった。そんなに甘いもんじゃないか…





「お前中間(テスト)の時の点数はどうだったんだ?」


一柳くんも私と一緒に休憩するのか本を閉じると、哀れそうな顔をして私に聞いてくる。





「…ご想像の通りですよ。5教科中4教科は赤点でした」


テスト前に勉強なんてしない派だからなー。でもさすがに赤点はやばいか…





「信じられないな」

「う…ですよね」


あなたはあの有名な白百合なんとか学園ですもんね~こんな普通の県立高校のテストなんて一柳くんからしたら小学生レベルくらいの感覚でしょうか?





「一柳くんは勉強しないの?」


コップについだジュースを差し出す海音は不思議そうな顔をして聞く。一柳くんいる机には本とスマホだけしかなくて、勉強道具らしきものは何も無かった。




「するまでもないだろう。つくば高校のレベルなら俺には勉強は必要ない。ま、白学のテストも同時期にあるからそっちの勉強はやっているが」

「テストが2回あるなんて大変ですね。会長にとっての本校は白学なんですからつくば高校で受ける必要ないんじゃないんですか?」


ジュースをぐびぐびと飲む本間くんが、眼鏡をくいっと持ち上げてそう言った。

確かに…一柳くんがつくば高校に通ってる理由はあくまでも生徒会だけの目的であって仮なわけだから、テストは元の高校だけ受ければいいんじゃないの?
< 38 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop