生徒会長が私を好きな理由
キッチンを指差す私を見て、悠生はハァとため息をついた。




「お前そろそろ帰れよ。もう充分だろ」

「ローズさんが帰って来たらね。さっきメール来たけどデートが盛り上がってるから帰るの遅くなるって」


悠生が寝てる間にデートが押してるとかってメールが来ていて、私は「ごゆっくり~」と返事を返した。少しでも長くここにいたいし…

私は作ったシチューを悠生に出すと、なんだかんだ文句を言った後で仕方なく手をつけてくれた。





「デートなんて…くだらないな」

「いや、好きな人がいたら普通デートするもんでしょ」


パクパクとシチューを口に運ぶ悠生は、信じられないと言ったような表情を見せる。私は悠生の隣に座りテーブルに肘をつく。




「好きな人?」

「うん。好きな人とどこか行きたいとか思わない?映画とか買い物とか」


自然と話題が恋の話になりドキドキする。もしかしたら悠生の恋愛観を聞き出せるチャンスかも!





「好きなんて…そんな感情は勘違いでしかないだろ。一時の気持ちだけですぐ関係なんて終わる」

「そんなことないよ」


恋愛に随時冷めきってる反応だな。ここまで言われると勝手にフラれている気分になるよ…




「愛なんてしてる奴らの気がしれないね。俺は一生独身でいるし彼女なんかいらない…恋愛なんて必要ない」


悠生はそうキッパリと言い切ると、シチューを残さず食べきり「ご馳走様」と言った。


私はというとショックの 一言だった。ということは、私は一生悠生と結ばれるチャンスはないってこと?

私の恋は…ここで終わりなの?そんなの嫌だよ…






「あんたはどうであれ…私は恋愛してる人達が素敵だと思うし…羨ましいと思うよ」

「羨ましい?本気か?」

「…当たり前じゃん。だって私だって好きな人いるんだから」


私がそう言うと、悠生は少し驚いたようにこっちを見てきた。私は拳を握りしめて小刻みに震わせていた。



もうフラれてるようなものなんだから…

私は突き進む…


このままじゃ嫌だから…

私の気持ちは伝えたいと突然に思ってしまったから…






「この暑い日にわざわざあんたの家に来て看病するって言って…スーパーで材料買いまくって…おまけにエプロンまで持ってきちゃって…どうしてだと思う?」


つけていたエプロンを取りながら悠生に聞くと、もう私の言いたい事に気づいたのか悠生はかなり驚いているようだった。
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