生徒会長が私を好きな理由
慌てて「初めましてっ!」と返すと、急に悠生が見知らぬ男性に引っ張られどこかに連れていかれる。

先輩かな…?





「ようこそ白百合清蘭学園へ。今日は楽しんで行って下さいね」

「は、はい!もうすでに楽しい事ばかりで…今日来れて良かったですっ」


理事長に話しかけられた私は、緊張してあたふたしながら言葉を返す。額や体中に汗が吹き出しせっかくのドレスが台無しになるくらいだ。



理事長って…この人の事なんだ…

この人が悠生をつくば高校に行くように指示した人なんだよね。





「一柳くんが友達を連れてくるなんて…本当に変わったわね。あの子を他所の学校に移住させて良かったわ」


フロアの端で男性とヒソヒソ話す悠生を微笑ましく見て言う理事長。




「一柳くんね…ここの学校にいた時はとても優秀で完璧な生徒だったけど、いつも1人でいたし他人と深く関わろうとしない子だったのよ。だけどいつも寂しそうな顔をしてた…私はそれに気づいていたし、それに一柳くんのご両親も心配していたのよ」


理事長は懐かしむような口調で言うと、悠生を見て少し涙目になっていた。





「私は一柳くんのご両親とも長い付き合いだから、彼の事は幼い頃から知っていた事もあって特に可愛がっていたの。だから余計に学校でつまらなそうにしてる彼を見る度に胸が傷んでね…」

「…あの……こんな事私なんかが聞いていいのかわからないですけど、どうしてつくば高校に悠生を?」


ずっと前から疑問に思っていた事だった。きっと悠生だってそうだ…





「最初からつくば高校に行かせる予定ではなかったの。ただ違う学校に行かせる方があの子の為だと思ったわ。あの子にはこの学園ではやりたくてもやれない事がたくさんあった…ここは彼にとってとても窮屈で居心地の悪い所だったのよね。だからとりあえず学校を移動してみたらどうかって提案してみたのよ。最初はかなり嫌がっていたけど、ハンデをつけて無理矢理にでも行かせるようにしたわ」


ハンデは成績の単位を落とすっていうやつか。前に悠生が言ってたもんな…





「どこの高校がいいのか迷ってぼーっとショッピングしていたら、思わず転んでしまってね…その時助けてくれたのがつくば高校の校長先生だったのよ」
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