カルテットリバーシ
3.初めての二人きり
 だったらクレープ屋さんでもいいのかなって。
 きっとチョコのクレープも有る気がしたし、私も行ってみたかったから。
 そう提案したら緑君は嬉しそうに快諾して、駅前のクレープ屋に続く道を意気揚々と歩いていた。

「チョコアイス入りもありだよなーっていうか僕チョコソースよりチョコスプレー派なんだよね。わかるかなこの違い。ソースってどろっとしたココアの甘さがあるんだけどチョコスプレーはチョコが直なんだよね。混じりけない感じ。チョコとココアって結局全然違うんだよ。チョコはチョコ」

 楽しそうに語る緑君の姿を斜め後ろから見ていて。
 この間マンタについて嬉しそうに語っていた美夕ちゃんを思い出した。
 兄弟なんだなぁ。
 思わず笑っちゃったけど、緑君はお構いなしに、今度は美夕ちゃんの話をし始めて。

「あいつはさー緋色がいい緋色がいいって言うけど、結局緋色の事何も知らないんだよなー顔が好きってだけなんだよな。確かに緋色はイケメンだけどさ、あいつ結構自分のイケメンにコンプレックス持ってるっていうか、なんか後ろめたそうにするじゃん?だから美夕がいると申し訳なくなる事あったりするんだよなー」

 確かに。
 言う内容には納得したけれど、相槌を打つ場所はわからなくて、黙ってうんうんと首を縦に動かす。するとしばらく一人で喋った後の緑君がこちらを振り向き、

「聞いてる?」

 なんて確認してきたので、思わず背筋をぴんっと伸ばし。

「き、聞いてるよっ。あの、緋色の話、私も、そうだよねーうんうん、って、思ったよっ」

 慌てて言えば緑君は嬉しそうに笑って。

「そっか、良かった。退屈させてっかと思った~」

 そう向き直った。

 一瞬の今の笑顔に。
 くらりと視界が揺らいだ。

 ダメだ、私。緑君好きすぎるみたいで。今日生きて帰れるのかななんて。

 考えていたら、緑君が何かを語っていたのを思いっきり聞き逃してしまって、慌ててまた緑君の方に耳を傾けた。
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