カルテットリバーシ
 いつの間にか外は真っ暗で。
 いつの間にか私の家の前で。

 いつの間にか緑君は私の向かい側に立ってて。

 いつの間にか始まる、今日の終わりの言葉。

「楽しかったっしゅ~!あんがと!んでも悪かった、かな。…緋色と一緒のが良かったっしょ。僕でごめんね」

 どうしてだろう緑君はいつも。
 ちゃらっとした言葉の後の真面目な話が、とても強く聞こえる。

「ううん、…ううん。……嬉しかった、緑君と一緒に居られて、とっても」

 ドキドキ、ドキドキ。
 バレちゃうかな。私の気持ち、見えてしまうかな。

「そお?んじゃ良かった!二人だけって初めてだったね~次はきっと緋色も一緒だろうし、大丈夫大丈夫。…あいつらも楽しく過ごせてんのかな~。…」

 言葉の最後に、妙な間を作って緑君は一瞬私と目を合わせてすぐにそらした。
 きっと何か言おうとしてるんだなって思って少し、待った。

 緑君がまたちらっとこっちを見て。口を開く。

「…緋色はさ。あんなじゃない。いや、僕よりセレンのがもう緋色の事わかってるか。かっこいいんだけど変なとこ不器用っつーか、優しすぎて本心隠すっていうか」

「…うん」

 身に覚えが、たくさんあった。

「…頼むね!あんなだから!支えてやって!僕よりきっと、今、セレンのが緋色の近くにいると思うからさ!…見てて不安なんだよね~…無理してるの。…見えるから」

「……うん」

 努めて明るく言ってくれたであろう言葉が、たくさんの哀しみを放つ。
 その全部を落としてしまわないように、すり抜けてしまわないように。
 私の体で受け止めたい。

「…頑張る。緑君の分まで、私、しっかり頑張るねっ」

 緑君のためなら、いくらでも頑張れる。
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