カルテットリバーシ
4.彼氏と好きな人
 月曜日、お昼休み。
 お昼は一緒に食べる事になってるからいつも通り中庭に向かって緋色を探す。ぽかぽか暖かい陽気の中で、どうやら先に来ちゃったみたいで。校舎との堺のアスファルトの上に体育座りをして座った。

 眠くなってくる。
 とっても穏やか。

「セレン、学食混んでたっけ、待たせたさね」

 いつも通り現れた緋色は、手に何個かの惣菜パンと500mlのココアをストローで飲みながら。
 でも、何だかいつもと違う様子なのは。

「…喧嘩、…した?」

 腕に巻かれた包帯と、顔のこめかみ部分に大きな絆創膏。
 よく見たら首に痣のようなものも見えた。

「…まぁいつもの事さ、たいした事ないさね」

 そう、いつもの事。
 緋色はイライラするとどこかに喧嘩しに行ってしまう。だいたいはルールの決まった、殴り合いをする場所?に行っているみたいだけれど、たまに大きく怪我をしている時はストリートファイトというのをやっていると聞いた。
 それらがどういう違いでどういうものなのかは聞いた事がないけれど。
 心配じゃないって言ったら嘘になるけど、私達がストレス発散で甘いもの食べに行ったりカラオケに行ったりするのと一緒だと説明されて、文句が言えなくなってしまった。

「…でも、…でもやっぱりいつもながらとっても痛そうだよぉおぉっ」

 隠しておこうと思う本心も、結局私の口からはだだ漏れで。
 緋色はおかしそうに肩を震わせて笑いながら私の隣りに座った。

「すまんさね、見た目ほど痛くもないんさ。だっけ、セレンに心配されるのは悪くないさね。可愛いすぎか」

「い、痛そうなものは痛そう…っ。怪我が早く治る食べ物ってなんだろう、ビタミンかな。ビタミンBとかなんとなく効きそう…豚肉?焼き肉、食べに、行こっか!!」

 やるな、とは言えないから、せめて早く治して、と。

「…いや、なんさ。そうさね。じゃあ帰りに肉まんおごってくれてもいいさ」

 きっとそれを見透かされてて。
 そういうことしなくていいとも、迷惑だとも言わないために。
 こうして優しい言葉をくれる。

「うん!!私は…ピザまんにしよっかな~っ」

 るんるんしてる私を見ればきっと緋色は。

 嬉しそうにくしゃりと、笑ってくれる。
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