カルテットリバーシ
 少しだけ話したかったから緋色の部屋に寄って行く事にしたら、先に部屋に前には緑君が待っていた。つまらなそうにスマホをいじりながら。

「来てたっけか、今開けるさ」

 いつも通りの事のように緋色は鍵を開けて緑君を中へ促し。
 私も一緒に中に入り。
 緑君の背中を追いかけるようにリビングへ向かった。

「…僕居て平気?」

 緋色がまだ来る前にそう聞かれて。
 緑君がいたらダメなことってなんだろうと考えながら。

「…うん?大丈夫、だよ」

 歯切れ悪く答えたのが気にかかったのか緑君はじーっと私の顔を見つめて。
 な、何。
 ドキドキ、するけど。

「二人で大事な話したりとか。恋人同士の時間に邪魔者は来るなよ!的な感じー?」

 言ってる事は過激なのにいつものおどけた表情の緑君に。
 それでも私は動揺してあたふたと両手を顔の前に広げてぱたぱた振った。

「な、なな、ないよっ。緑君居てくれたら、私、嬉しいし、とっても嬉しいしっ」

「邪魔さね。今からイチャイチャタイムだっけ、緑邪魔さ」

 突然後ろから緋色の声が聞こえて顔がぼんっと赤くなった感覚がした。

「イ、イチャイチャタイムって何っ!?」

 振り向くも、緋色はすでに興味なさそうに私達用の飲み物を用意しに台所へ向かっており。カウンターになっているところからいたって冷静なその姿をぽやんと見守った。

「…まぁそうだよね。擬似恋人でもイチャイチャくらいするよね。ふむ」

 反対側を向けば緑君は妙に納得した顔でリビングのソファに向かっており。
 一人私だけがずっとあたふた。わたわた。
 どうしてみんなこんなに冷静でいられるの…と心の中で泣いた。
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