カルテットリバーシ
 涙が止まるまで緋色はずっと電話をつないでくれていた。
 時折何か言葉を止めている風だったのは、多分、「そっち行こうか?」って言おうとしたのを止めてくれていたんだと思った。言えば私が断るから。私に気を遣わせるような事は緋色は言わない。
 緋色にまで我慢をさせることになって。
 自分の情けなさにもう何も言えなくなった。

 好きだと思ったところが恋のスタートラインだと思ってた。
 緑君を好きになって、緑君と一緒にいたくて、緑君の笑顔が見たくて、そう思うことが、一緒にいられるのが嬉しいって思う事が、恋なんだと思ってた。

「…違ったんだ。恋って一人でするものじゃなかったんだね」


 恋には相手がいたんだ。
 私が勝手に好き好き言ってドキドキして、そういうのじゃなかったんだ。
 緑君も私を好きになってくれるのかな、緑君も私と一緒にいたいって思ってくれてるのかな、って、そう思った時に初めて恋になったんだ。

 相手の事なんて、考えてなかった。
 ずっと、独りよがりな妄想をしていただけだった。

 ベッドにごろり仰向けに転がる。

 どんな顔して会えばいいの。

 …どうしたら緑君は私を好きになってくれるの。
 …好きになって、欲しいの。

 好きになって、欲しいの。

 緑君の、好きな子に、なりたい。

 なりたい。



 そっと目を閉じれば、まだ帰り道に私の心配をしてくれた緑君の顔が見える気がする。
 一生懸命話してくれたのに、何も喋れなかった女の子なんて、嫌いですか。もう、お話したく、ないですか。謝ったら、許してくれるのかな。また、お話出来るのかな。
 …出来るのかな、私は。
 緑君と、ちゃんとお話、出来るのかな。

 怖い。

 明日が、怖い。
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