カルテットリバーシ
 ベッドに転がってぼーっとしていたら、部屋をノックする音に体を起こした。
 ガチャリとお母さんがドアを開ける。

「セレン?お友達が来てるけど、あら、寝てたの?」

 泣きすぎた私の目でベッドでぼーっとしていれば、必然的にそう見えるのも頷けた。

「友達…?」

「美夕ちゃんだっけ、ほら、同じ部活の元気な子」

 美夕ちゃん?どうしたんだろう。

「あ、今玄関、行く」

 言えばお母さんは一足先に玄関の方へ向かって行き、私は鏡を覗き込んで目の腫れと髪型を確認した。
 完全に腫れ上がっている目はもうどうにも隠しようがなかったからあきらめて、髪型の方はくしを通せば直りそうな気がした。ぱぱっと髪を梳いて、玄関へ向かった。


 玄関に。
 美夕ちゃんともう一人。

「緑、君」

 階段を降りたところで漏れたその声はきっと二人には聞こえなかったと思うけれども。

「セレンー!王子様、いなくなっちゃったんだって!?大丈夫だった!?」

 私の顔見るなり美夕ちゃんが声を上げたので、とりあえず部屋へ上がってもらうことにした。美夕ちゃんに部屋の場所を教えながら階段を上がってもらい、その、後ろ。
 緑君と目が合えば、お互いにそのまま固まった。

 緑君に、連絡入れるの忘れてた。
 でも、どういう連絡を入れれば良かったのか、今考えてもわからない。
 緑君はあの後緋色の部屋へ行ったんだろうか。
 きっと行ったんだろうけれども。
 だったらどうして今ここにいるんだろう。

 どうして。

「…あ、……何、えっと。迷惑だったら言って、美夕も迷惑なら、僕連れて帰るし」

 よそよそしい言葉に首を振った。

「…ううん、ちゃんと、…話したい、…。緑君と」

「…美夕いない方がいい?」

 聞かれて、考えて、でも頭ももう疲れてて、あんまり考えられなくて。

「うん、…緑君と二人の方が、良かった気がするけど……よく、わかんない。…わかんなく、なっちゃった」

「…僕も、部屋上がらせてもらっていいの?」

 聞かれてこくりと頷いた。
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