カルテットリバーシ
 部屋のセントポーリアに水をあげた。
 セントポーリアは白い花びらに赤い模様の出る種類のお花で、5月に葉挿しという方法で部屋の小さな鉢植えに入れて増殖させたもので、同じものがリビングにいっぱい咲いてる。自分で育てるのは初めてだから、ちゃんと出来るのか心配だったけれど。

 お水は、週に2回だけ。日光も当てちゃだめ。肥料も多いとだめ。
 全部が他のお花の4分の1くらい。とても強いお花だって言われた。

 5月に葉挿ししたセントポーリアは早ければ11月、遅くても年明けには咲くはずで。でも温度が低すぎると咲かないって聞いた。お水も、冷たくなる季節には暖めないとダメだと聞いた。

「おっきくなってきたなぁ」

 いつの間にか自立出来るようになったその葉っぱを優しく撫でた。

「…緑君怒ってるのかな」

 ふと目を伏せ思い出すは緋色の家で会った時の緑君。
 どうして怒っていたんだろうって考えたけれど、きっと、緋色に、ちゃんと恋人の面倒ぐらいみろよって言いたかったのかなって思うと、私の方が間抜けな事して一方的に悪かった事がとても心に痛い。

「…緋色は悪くなかったんだよ、緑君…」

 私が何を言ってもきっと、「セレンは緋色をかばってる」とか言われるのだろうから、もう言っても聞いてもらえないと思うけれど。
 それでも自分のせいで誰かが悪者になってしまうのは悲しかった。

「もう、緋色の事好きな子から何かされたり、しないように気をつけよう。そしたら、緑君、怒らなくてすむよね」

 目の前のセントポーリアは微動だにせず。
 でもこっちを見て「大丈夫だよ」って言ってくれてるような気がした。

 頑張ろう。
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