カルテットリバーシ
 緑君の後ろを歩く。
 まだ明るい午後の日差し。

 車通りはそこそこ、大きな道の歩道。反対側はもう枯れ始めている背の高い雑草に覆われた、ガタガタとした印象の、歩道。二人で並ぶにはちょっと狭い、歩道。

 言わなきゃ。
 伝えなきゃ。

 思うけれどタイミングがわからなくて、ずっと、ただ歩いて。

 下を向いて足を止めた。


 気がついた緑君が、数歩先へ行ってしまっていたのを戻って来てくれて顔を覗き込む。

「…別れたくなかった系?」

 私が落ち込んでるのと勘違いしてるみたいだった。
 だから首を横に振った。

「…オ、セロ、したの。緋色と」

「うん」

 何を話せばいいのわからなくてめちゃくちゃな事を言い出した私に、それでも緑君は優しく、言いたい事だけ言えばいいよ、というような素振りで声をくれた。

「全部、白くなったら、別れようって」

「うん」

「黒は、私の緋色への気持ちで、白は、私の、…み…緑君への、気持ちだよって」

「…うん?」

 体が、震える。
 見つめている地面まで、大地震のように、揺れる。

「最初は、黒がいっぱいで、でも、どこからか、一瞬で全部が白くなって、全部置き終わってないのに、もう、黒が置けるとこはなくなっちゃって」

「…」

 もう緑君の相槌も、来なかった。
 今。


 今。

「み、…緑君が、好きです」

 隣りを大きな車が何台も通りすぎて行くけれど、私の声は確実に緑君まで響いたと思った。

 顔が上げられない。息も出来ない。
 動けない。
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