カルテットリバーシ
 これ以上何を言えばいいのか、いつから好きだったよとか、こんなとこが好きなんだよ、とか、いっぱい考えたけれど、そもそも緑君は私にこんな事言われて嬉しいのかなって思ってしまったら、ごめんなさいをしたくなった。

「あ、あの…違うの、今まで通り、お話してくれたら嬉しいし、特別何かを求めてるとかじゃ、なくて、あの、ただ、好きって言いたくて、私の好きな人、緋色じゃないんだよって、わかってて欲しくて、だから、」

「特別な何かを、求めない好きって、どういうの?」

 急な切り返しに言葉が止まった。
 うるさいバイクが通りすぎて行く音がする。

 違う。
 逃げてる。
 緑君がどう思ってるか考えて、じゃない。

 緋色も頑張ってるのに、私、逃げてる。

 間違えた。

 ぎゅっと鞄を掴んで顔を上げる。

 緑君が目の前にいる。

 緑君。


「…違、う。私と、…付き合ってくれ、ませんかっ」


 ぶつ切れになった言葉の一個一個が全部私の心に突き刺さってくる。
 でも。

「ひ、緋色に押し倒されて、怖いって思った、その後、私も緋色傷付けて申し訳ない気持ちでいっぱいになった、でもその後、…その後は…っ」

 逃げない。

「緑君にして欲しいって思ったっ、キスするのも、それ以外も、緑君なら良かったのにって、思ってた…っ」

 目をそらすことも出来ないまま言葉を待つ。
 ちゃんと伝わっていますか。

 ちゃんと、届きますか。
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