拝啓 偽りの君
「確かに、表情筋が痛くなりそうだね。」


「物理的ね。」







「―じゃあ、なんで笑ってるの。」

そう言うと彼女は黙った。


「偽ってるから疲れる?」

僕の声のトーンが低くなったせいか、明らかにさっきと空気が変わる。



そして彼女が困ったように笑って、

「なんでって言われると分かんないけど……」


笑ってると楽なのよ
そう言った。

なにそれ、矛盾してるじゃんと言おうと思ったけど、彼女のその寂しそうな笑顔に言葉が出なかった。


「笑ってるとさ、痛みとか鈍感になって感じなくなるの、不思議よね。」

僕は君と話すと君の笑顔が本物か嘘か分からなくなる方が不思議だよ。いつも見ている時はすぐに分かるのに。


「なんかどうでも良いんだー。あと5ヶ月だしね、」
卒業。と彼女はとびっきりの笑顔で言った。


その笑顔が本物か、嘘か僕には分からなかった。
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