繋いでくれた歌【完結】
「僕とひまりはどっちかが欠けてもダメなんだよ。
その不安を僕にも頂戴。ひまりが笑ってくれるなら、僕はいくらだってひまりが求める言葉を呟くよ。
……僕がね、自信を持っていられるのはひまりがいるからなんだよ」
「え?」
「実は…周りの期待に応えるのが嫌で、僕逃げ出した事があるんだ」
「はっ!?」
思わず、大きな声が出た。
逃げ出した?ケーが?
ケーは困ったように笑うと、「うん」と頷く。それから続けた。
「たくさん求められたんだよ。ボカロに歌わせてからも、誰かに曲を提供してからも。
だけど、何かが物足りなくて満たされなくて、心にぽっかりと穴が空いたみたいな空虚な感覚に耐え切れなくなったんだ。
気付いたら逃げ出してた。携帯を置いて、財布だけ持って逃げ出した」
「……」
そんな事があったんだ。
天才だと言われたケーの重圧はきっと、私以上かもしれない。
「でもさ」
そう言って、何かを思い出したかのようにくくっとケーが笑った。