繋いでくれた歌【完結】
着々と曲を歌い終わり、とうとう最後の曲を迎える。
バックステージに戻るとスタッフの一人からギターを受け取った。
その時、やけにスタッフがざわざわしているのが目に入った。
「どうかしたんですか?」
「えっ、いや、なんでもないです。スタンバイお願いします」
「うん。ねえ、新條さんはいませんか?まだケーが来てないんだけど」
私はずっと気になっていた事を尋ねる。
もうとっくに到着していていい筈なのに。
ケーはまだ会場に来ていなかったんだ。
駅から会場まで渋滞してるのかな、なんて思ってたけど……。
さすがにここまで遅いと心配だ。
「だ、大丈夫です。きっと、遅延してるんですよ。
ほら、ひまりさん。観客が待ってます」
「……うん、わかりました。何かわかったら教えてください」
「はい」
ぎこちない笑顔を向けるそのスタッフを不思議に思うけど、私はギター片手にステージに戻った。
ケーが間に合わないのが悔しいけど。
それでも、ケーは聞いてくれている様な気がした。
この場にいなくても。