繋いでくれた歌【完結】
信じたくなんてない。
病院に到着したけど、私の足は動かなかった。
肩を抱かれて、新條さんに連れていってもらうしか移動出来なかった。
力なんて入らない。
見たくなんてない。
看護師と話をしてる新條さんの言葉は私の耳を素通りしていた。
終わったら笑顔のケーが迎えてくれると思っていたのに。
こんなの、あんまりだ。
事故の所為か、病院内は慌ただしい。
ぼんやりとしか聞こえなくて、何を言ってるのかは理解出来なかった。
ケーのいる病室。
そこに連れていかれた。
ベッドに横になっているケーの姿が段々と見えてくる。
呼吸器をつけて、心音を確認する機械音が響いていた。
「……け、ぃ」
来栖慧。
ベッドの上にはそう書かれていた。
ああ、これは本当にケーなんだ。
あちこちに包帯が巻かれていて、ただ呼吸だけをするケー。
確かに息をしてるのに、その瞳は開かない。
もう、私の名前を呼ぶ事はないのか。