繋いでくれた歌【完結】
新條さんの腕に掴まりながら、私は声を震わせた。
「……ケー……目を、覚まして」
「……」
新條さんが私の肩を強く抱きしめる。
「お願いだから、お願い。ケー、ケー……」
涙は出なかった。
事実だって、受け入れたくなんてなかった。
何も浮かばない。
夢であってほしい。
頭が働かなくて、目の前に見える光景全てが嘘のように思えて。
ガクっと私は膝から崩れ落ちた。
「ひまりさん!?」
驚いた声をあげる新條さん。
その新條さんに抱えられながら私は病室を後にした。
待合室に座らせてくれると、新條さんはどこかへ向かう。
その間、私はぼーっと床を眺めていた。
戻ってきた新條さんの手にあったのは、飲み物だ。
それを私は黙ったまま受け取る。
「……温かいので、少しは気持ちが落ち着くかもしれません」
でも、何も感じなかったよ。
温かさも、冷たさも。その缶からは。