繋いでくれた歌【完結】
受け取ったはいいものの手に力が入らなくて、私はその缶を落とす。
ガコンっと音がして転がった缶を新條さんがとると、プルタブを開けて私に再度渡してくれた。
「……ひまりさん」
「……」
少しだけ口をつけると、新條さんがそれを受け取ってくれた。
「どうしますか。ホテル帰りますか。ここにいますか」
「……ここに、いる」
「では、私もご一緒して大丈夫でしょうか」
「……はい」
どこからか毛布を持ってきてくれた新條さんは私にかけてくれる。
本当に保護者みたいだ。
どれだけ時間が経ったのだろう。
まだ夢の中にいるみたいに私の思考はふわふわとしていて、ハッキリしない。
「ひまりさん」
「……」
「勝手なこと、今から言います」
「……」
私は力なく新條さんの顔を見る。
眉を下げたその情けない顔で微笑む新條さん。
「お願いです、これからケーがどうなろうとも……歌ってください」
それに少しだけ目を大きく開けた。