繋いでくれた歌【完結】
「……考え、させてください」
そうとしか言えなかった。
その答えに、新條さんは悲しそうに微笑むだけだった。
その時。
「来栖さんのご家族の方はいますか」
看護師がそう言っていて、二人して顔を上げた。
すぐに新條さんが立ち上がる。
看護師は私達を見つけると、こっちに向かってくる。
「えっと、来栖さんの…」
「はい、家族代わりです」
「そうですか。これ、来栖さんの手荷物品です」
手渡されたのは見慣れたバッグ。
オシャレに興味のないケーは、いつもそのバッグだった。
それが所々、破れていたりして私は思わず目を逸らした。
言葉を詰まらせながら、お礼を言う新條さんがそれを受け取ると「それと…」と看護師さんが言葉を続けた。
「これ、大事そうに手の中に抱えていたそうです」
そうやって、看護師から手渡されたのは小さな箱。