繋いでくれた歌【完結】
角が潰れていたけど、その箱には。
≪ひまりへ≫
そう、書かれていた。
「……」
震える手でそれを私は受け取った。
すぐに看護師はその場からいなくなったけど、私の思考は止まったまま。
「……開けてやってください」
その中身を知ってるかのように、新條さんが私に言った。
私はゆっくりとその包みを解いていく。
中にあったのは。
一つのUSBメモリー。
この中に何が入ってるかのヒントなんてものは他にない。
たった、それだけ。
ケーが私に残したかったもの、それは何なんだろうか。
「……使い方はわかりますね?」
「はい」
「それじゃあ、一人の時に開いてください」
手の中にあるそれを私は黙って見つめる。
「きっと、ケーの気持ちは貴方に伝わります」
新條さんがそう言った意味はわからなかったけど。
今はまだ見る気になれなかった。
頭の整理なんてつくのかわからないけど、こんな状態で冷静になんて見れない。