繋いでくれた歌【完結】
あの事故から一ヶ月が経とうとしていた。
今日も私はケーの病室へと訪れてる。
包帯が巻かれているだけで、眠ってる様にしか見えないその姿。
「こんにちは、ケー」
私はそう声をかけると、椅子に座る。
私がいくら話しかけても返事はこない。
「ダメだね。私。ケーがいないと歌えないんだよ」
眉を下げ、ふっと微笑む。
折角、夢を掴んだのにね。
歌手になりたくて、頑張ってきたのに。
「ケー、悲しみはいらないよ」
そう、ぽつりと呟く。
ピッピッという機械音だけが部屋に響いた。
一時間ぐらい過ごして、家に帰る。
病院とを往復するだけの毎日。
ケーの家にも行けてない。
結局、あの日貰ったUSBメモリーは開けられないままだった。
家に帰宅すると、玄関に見覚えのない靴があって私は首を傾げた。
誰だろう。
そう思いながらリビングを覗く。
そこにいたのは―――――新條さんだった。