繋いでくれた歌【完結】
「……はあ。いいですけど。それで、どこに行くんですか」
私はシートベルトをしながら、車を発進させる新條さんを見た。
新條さんは前を向いたまま口を開く。
「ケーのとこです」
「……病院ならさっき行きましたよ」
「違います。家です」
「え?なんで家に」
「それの中身を見せる為ですよ」
そう言って、ちらりと視線をこちらに向ける。
新條さんが言ってるのはきっと、私のポケットの中にあるUSBメモリーの事だ。
「……」
「きっと、貴方はそれを見ていないのだろうなと思って。
そして自分じゃ見ることはないのだろうと」
「……」
それに私は何も言えなかった。
だって、本当に自分じゃ見ようと思わなかったんだから。
きっと、こうして無理矢理連れ出されなければ私がこの中身を見ることはなかっただろう。