繋いでくれた歌【完結】


「私は仕事をしているから気が紛れてますが、貴方の仕事は歌う事です。
それがどんなに過酷な事か、私には測り知れません」


新條さんは続ける。


「貴方とケーの夢を、辛いままにしておきたくなかったんです。
私の、お節介ですね。これは。
だから、もしもケーからの贈り物を見て、それでも貴方が歌いたくないと言うのなら……その時は諦めます」


ふ、っと微笑む新條さん。
悲しそうな笑顔を見て、私の胸もズキっと痛んだ。



「さて、到着しました」


見慣れたケーの家。
セキュリティとかあるから、引っ越ししようと新條さんが勧めても“ここがいいんだ”と、ケーは結局最後まで首を縦に振らなかった。


私としてはどこでもよかったんだけどさ。


合鍵を慣れた手つきで差し込むと、扉を開ける。
先に中へと足を踏み入れた。


一ヶ月以上、来ていなかったケーの部屋。


前に来た時と変わらない、機材が乱雑に置かれた部屋。

< 153 / 163 >

この作品をシェア

pagetop