繋いでくれた歌【完結】
「私は仕事をしているから気が紛れてますが、貴方の仕事は歌う事です。
それがどんなに過酷な事か、私には測り知れません」
新條さんは続ける。
「貴方とケーの夢を、辛いままにしておきたくなかったんです。
私の、お節介ですね。これは。
だから、もしもケーからの贈り物を見て、それでも貴方が歌いたくないと言うのなら……その時は諦めます」
ふ、っと微笑む新條さん。
悲しそうな笑顔を見て、私の胸もズキっと痛んだ。
「さて、到着しました」
見慣れたケーの家。
セキュリティとかあるから、引っ越ししようと新條さんが勧めても“ここがいいんだ”と、ケーは結局最後まで首を縦に振らなかった。
私としてはどこでもよかったんだけどさ。
合鍵を慣れた手つきで差し込むと、扉を開ける。
先に中へと足を踏み入れた。
一ヶ月以上、来ていなかったケーの部屋。
前に来た時と変わらない、機材が乱雑に置かれた部屋。