繋いでくれた歌【完結】
「……」
勝手に涙が溢れて来た。
それは線となり、私の頬を伝っていく。
ケーの事故の後、初めて流した涙だった。
「……っ、」
私は歪む視界の中、別のフォルダを開く。
またも流れてくるのは、初めて聞くケーの綺麗な音楽。
何曲、作ったんだろうか。
数えきれない程のフォルダ数がそこにはあった。
“ひまりと出逢ってからの僕は、素敵なメロディが常に鳴り響いていて止まらないんだ”
もう、歌がうたえなくなると思ってた。
だけど、どうしてそんな事が出来るのだろうか。
彼は。
ケーはこんなにも私の声を求めているのに。
私が歌わないで、誰がこれを歌うんだ。
他の人にいくら積まれたって、絶対に歌わせたくない。
これは私だけのものだ。
彼女の、私だけの特権だ。
ケーはいつだって私に与えてくれる。
与え続けてくれる。
それに私は応えたい。