繋いでくれた歌【完結】
彼の履き潰したスニーカーだけ視界に映すと、私はギターを片付け始める。
だけど、彼のそのスニーカーが動く事はない。
心の中で盛大に溜め息をつきながら、私はちらっと彼を見上げた。
ニコニコしてる彼に向かって、ぼそっと呟く。
「何か」
なんて愛想のない嫌な言い方なんだろう。
それでも、早くどっかに行って貰いたい私としたら笑顔を振りまくなんて事出来ない。
ようやく、彼の顔を視界に映し込んだ私。
目尻が少しだけ垂れた目と、不揃いの髪の毛。
ぼさぼさの眉に、薄い唇。
イケメンと形容するのは難しい彼の顔。
「いや、えっと、あの、もう帰っちゃうんですか」
視線を彷徨わせた後、そうやって言った。
どうにか会話を繋げようとしているらしい。
だけど、私はそれを繋げるつもりはない。
「はい、もう夜も遅いんで」