繋いでくれた歌【完結】
「君は歌手になりたいんじゃないですか?」
それに、ドクンと心臓が鳴る。
私はゆっくりと新條さんの方を見た。
赤信号に停まると、彼もこっちを見る。
「契約してくれたら、ケーの曲でデビューさせるって言ってるんですよ」
「……」
そんな、簡単に決まっていいの?
それってこんな簡単に決まるものなの?
突然訪れた大き過ぎる話に、私は頭がついていかない。
「君にとったら悪い話じゃないでしょう。
駅前でああやって歌ってるって事は、少しでもその気持ちがあるんですよね?」
そう言うと、クスリと笑う新條さん。
バカにされてる様で、頬がカッとなった。
「断る、予定でしたから」
そんな彼に、私は素っ気なくぼそっと言った。
「どうしてですか?」
然程、不思議にも思ってないらしい。
こう言われるのを想定していたのだろうか。