繋いでくれた歌【完結】
時間は22時過ぎ。
駅前の人も疎らになって来た。
これじゃ立ち止まる人なんているわけがない。
黙々と片付けを進めて行く私。
その間、ずっと立っている彼。
カタンとケースを閉めると、私はすくっと立ち上がった。
座ってる時は気付かなかったけど、彼は結構身長が高いらしい。
これはプラスポイントだ。
だけど、そこまでで。
私はぺこりと彼に頭を下げると、さっさとその場を後にしようとしていた。
そんな私の足を止めさせるのはやはり彼だった。
「あ、その、」
なんとも歯切れの悪い呼び止め方だ。
私は無表情のまま彼の方を振り向く。
寒いんだよ。早く帰りたいんだよ。
なんか、雪が降りそうじゃん。
自分の吐いた息が目の前で白くぼやけていく。
言葉の続きをじっと待っていると、彼がようやく口を開いた。