繋いでくれた歌【完結】

「まあ…、こう言いましたが、いくらケーが貴方を推してもこちらが売れないと判断したらデビューはさせないですけどね」

「っ!」

「当然です。私達は慈善活動をしてるわけじゃない。
これは仕事です。商売なのですから」

「……」


至極、当然な事だ。
売れなければ捨てられるのなんてわかってる。


だから、今まで“私はデビュー出来なかった”んだ。



「なので、博打と思ってやるだけやってみたらどうでしょうか?」

「……」

「さ。到着しました」

「え」



ケーの家は豪華なマンションとか、そんなんじゃなかった。
質素な二階建てのアパート。


車から降りて、そのアパートをまじまじと見つめてしまう。


「驚きました?ケーはデビュー前からずっとここに住んでるんです。
彼にとって音楽活動以外は興味ないんですよ。まあ、セキュリティ的に私は引っ越しを勧めてるんですけどね」


さ、と言いながら新條さんが部屋へと案内してくれた。
その後ろに付いて行く。


一階の一番奥がケーの部屋。
電灯が点滅していて、不気味だ。


本当にここに住んでいるのだろうか。

< 42 / 163 >

この作品をシェア

pagetop