繋いでくれた歌【完結】
年季の入った扉の前に立つと、新條さんは鍵を取り出し中へと差し込む。
鍵持ってるんだ。
マネージャーなら普通なのかな。これって。
じっと新條さんを凝視してると、視線に気付いた様だ。
「ああ、これですか?」
そう言って、鍵を少しだけ掲げる。
思っていた事を見透かされて、ドキリとした。
「ケーは曲作りに没頭すると、時間忘れるのでよく遅刻するんですよ。
だから、それを防止する為にです」
「……はあ」
続けてそうですか、と呟いた声を新條さんは一切聞いてなくて、何も言わずに勝手に扉を開けるのを見て少しだけ驚いた。
何も言わないんだ。
いいのかな。これって。
でも、いいのかもしれない。
二人の間ではこれが普通なのか。
そう納得させてから、私は遠慮がちに中へと足を踏み入れる。