繋いでくれた歌【完結】
「次はいつ、来ますか」
「さあ、決まってないです。それじゃあ、電車の時間あるんで」
そう言って、私は今度こそ彼の前から立ち去った。
振り返る事もせずに。
何アイツ。めっちゃ怖いんですけど。
それにすっげえ挙動不審。
言いたい事があるならハッキリ言えばいいのに。
“……上手ですね”
聞き飽きたんだよ。そんな言葉。
皆、上手って褒めてくれる。
だけど、それだけだ。
私はもっと歌いたい。
もっと、誰かの心に届けたい。
感動として、人を震わせてみたい。
でも、どうしたら出来るんだろうか。
私にはその力がない。
ないんだ。
ぐっと手を握り締める。
ぐしゃりと切符が手の中で潰れた。