繋いでくれた歌【完結】
「僕は一旦曲作りに集中しちゃうと、他を全て疎かにしちゃうんだよね。
よくないってのはわかってるんだけど、音は生きてるからその時でないときちんとメロディになってくれなくてさ。
真史にはすっごい怒られてるんだけどね」
「アルバム、聞いたよ。感動した。
……本当に、ケーって天才なんだなって思うよ」
「僕は天才なんかじゃないよ。一人じゃまず生きられない。
真史が色々面倒看てくれてるから生きてるようなもんだし」
「新條さんって、マネージャーじゃ…」
「うん。僕のマネ。でも、それより前から知ってるんだ。
高校の文化祭で弾いたオリジナル曲に感動してくれたみたいで、声をかけてくれた。
それを発表しませんかって。でもその時、僕は断ったよ」
「え?何で?」
私が首を傾げると、ケーは僅かに視線を伏せた。
それから、眉を下げて微笑むと口を開く。
「僕の曲を誰かに歌って貰うのが嫌だったんだ。僕の歌はボカロの為のものだったから。
だから、文化祭でも僕、自ら歌ったんだ」
「ケー、歌もうたうの?」
「やれってしつこく言われて仕方なく。僕はやりたくなんてなかったんだけどさ」
やっぱり音楽の才能があるんだな。凄い。
感動させる曲も書けて、更には歌もうたえるなんて。