繋いでくれた歌【完結】
「なのに、どうして自分で歌わないの?ボカロに歌わせてるのってどうして」
「……僕は。
自分の為のメロディってのは思いつかないんだ。いつも思いつくのは誰かの為の曲」
「……」
「ボカロの為に書いてるから、僕が歌っても違和感しかないし。
だから、僕の曲を発表するだけで幸せだったんだよね。
真史はそれじゃ勿体ないって、熱心にオファーしてくれてアルバム出す事になったり、他の人に曲を提供したりしたけど。
……物足りなかったな」
「物足りない?」
「そう、物足りない。
僕のアルバムのタイトル覚えてるでしょ?欲す。
求めてる声が僕には足りなかったんだよ」
交わり合った視線。
熱のこもった瞳。
心臓が変な音を立てて行く。
ざわざわと心地悪いのに、心地良い。
「ひまり。僕の前に現れてくれてありがとう」
「……」
「ひまりと出逢ってからの僕は、素敵なメロディが常に鳴り響いていて止まらないんだ」
「……」
「あ、今も。うん、素敵だ。後で作らないと。……僕の人生に色を添えてくれてありがとう」
「……ケー…」
するりとケーの手が私の頬を撫でた。
寝る前より少しだけ温度の下がった手。