繋いでくれた歌【完結】
『名前も知らない君へ』


街で一目惚れした相手に送る歌に聞こえるけど。
私にはどうしてもケーが私に宛てた歌にしか思えなくて、凄く好きだった。


自惚れかもしれない。
それでもよかった。


そのサビを口ずさむ。小さな声で。
昼間だし、迷惑にはならないよね?
駅前で思いっ切り歌いたいな。


サビを歌い終えたぐらいに、ガチャリと扉が開いた。
突然の事でビクッとしながら音がした方を見上げる。

すると、そこにはケーが立っていた。


きょろきょろと周りを見渡していたケーは、その視線をやっと下ろす。
そして、私と視線がかち合った。


「やっぱりいた!」


ケーの開口一番がそれだ。


「はあ!?」


私はきっと思いっ切り顔を顰めていたに違いない。


「一息ついたら歌が聞こえた!最初、幻聴かと思ったんだよ。
でも聞こえたのは僕の歌だったから、まさかと思って来たら……ひまりがいた」


興奮しながら話すケーは、最後に私の名前を口にしながらニッコリと微笑んだ。
ちょうどあの歌をうたってた事もあり、心臓が変に鳴りだした。


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