繋いでくれた歌【完結】


「あ。そうだ」


ケーは何かを思い出したのか、突然机の引き出しを開ける。
そして、私の手に握らせた。


「はい、これ鍵。持ってていいから」

「え」

「僕、あまり外に出ないし。僕のは真史にでも作らせるから気にしないで」


この家に住んでる本人が持ってないってどうなの。
私は目をぱちぱちさせながら、手の平に乗った鍵を見つめる。



「ひまりが持ってて。それで、僕に会いに来て」

「……」

「いつ来ても構わないから」



優しく微笑んだケー。
人懐っこい笑顔を見せるから、私は慌てて顔を逸らした。



「ありがと。ご飯作る」

「ん。待ってる」



私はポケットに鍵を突っ込むと、立ち上がりキッチンへと向かった。


気持ちを落ち着かせるように、一度深呼吸をすると食材を切っていく。
オムライスはすぐに出来上がった。
< 78 / 163 >

この作品をシェア

pagetop