繋いでくれた歌【完結】
ケーの歌が終わるまで、私の手が再び動く事はなかった。
ケーの声を聞き逃したくなんてなかった。
「あれ!?ひまり入れてないじゃん!」
次がまた自分の入れた曲だと気付き、マイク越しにケーが文句を言ってくる。
だけど、そんなの今はどうでもいい。
どうでもいいよ!
「ケー、めっちゃ歌うまいじゃないか!」
マイク越しのケーよりでかい声が出た。
ケーは驚いてびくっと体を震わす。
「勿体ないよ!こんなにうまいのに!」
素直で、正直な感想だった。
新條さんに文化祭で声をかけられたってのは、理解出来る。
私だって音楽関係者なら声をかけるよ。これは。
ケーは私の言葉に困ったように笑うと、マイクをテーブルに置いた。
それから私の手を取った。
「ありがとう。ひまり。
そうやって言ってくれる人は本当にたくさんいたんだ」
ケーの優しい温度が、手から伝わる。
少しだけ顔を俯かせたケーは続けた。