白い花が咲いたなら

「しー。図書室では静かにしましょう」


 そう言って彼は扉を開けた。


 赤く染まった顔をムッとしかめながら中を覗き込むと、シーンとしていて誰の姿も見えない。


「……あれ? 図書委員も先生もいないよ?」


「珍しいな。貸し切りじゃん。こんな日もあるんだな」


 あたし達は中に入り込んで、誰かいないか確認してみた。

 けど、やっぱり誰もいない。


 あたしと近藤くんは静かな空間の中で顔を見合わせ、思わず笑顔になる。


「誰もいない教室って、なんかワクワクするね」

「すげー得した気分だ」


 いろんな背表紙が図書室の壁一面にズラリと並んでいる様子は、見てるだけで楽しい。


 あたし、本が好きなんだ。

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