白い花が咲いたなら
本棚から植物図鑑を数冊取り出して、あたし達は窓際の席に向かい合って座った。
ペラペラとページをめくってみたけど、あの花はどこにも載っていない。
うーん、やっぱり見つからないか。
「まさかの新種発見とか。だったらあの花に、あたしの名前がついちゃうかも」
「…………」
「ねー、なんか反応してよ」
図鑑から顔を上げて、あたしはハッと胸を躍らせた。
近藤くんが見たこともないような穏やかな表情で、あたしのことをじっと見つめていたから。
放課後の図書室には夕暮れの陽射しが差し込んで、そんな彼の姿を優しく包み込んでいる。
彼の瞳は、その陽射しよりもずっと柔らかかった。
「な、なに見てるの?」
「お前」