白い花が咲いたなら
彼の気持ちが分からないから、どんな反応を返せばいいのかわかんない。
ただもう彼と顔を合わせるのが恥ずかしくて、あたしは窓の外に視線を逸らした。
「……あ」
「ん? どうかしたか?」
「ほら、あれ見て!」
フェンスの脇に、あの白い花が一輪咲いていた。
傾いた日の色を浴びながら、ゆらゆら気持ち良さそうに風に揺れている。
あたしは夢中で、大きな声を出した。
「あの花だよ! ねえ近藤くん、見て!」
「嫌だ」
「え?」
「俺、花を見るよりお前のこと見ていたい」
―― どきん……。
思わず振り返ったあたしを、近藤くんは見つめている。
さっきと変わらず、とっても穏やかな優しい目をして。
あたしは、自分の心臓の大きな音を聞きながら彼を見つめ返した。