白い花が咲いたなら

 だからあたしは無言で、校庭の音と自分の鼓動の音を聞くだけ。


 そして赤い顔で、うつむいていた。


「なあ、暗くなってきたしそろそろ帰らねえ?」


 近藤くんの声に、あたしは顔を上げた。


 彼は立ち上がりながら机の上の図鑑をまとめている。


「一緒に帰ろう。お前の家まで送っていくよ」

「え? い、一緒に?」

「うん。嫌か?」

「…………」


 あたしはガタッとイスから立ち上がり、彼の腕から図鑑を奪い取る。


 そしてスタスタと本棚に向かいながら


「べつに、いいけど!」


 って、ぶっきらぼうに答えた。


 嬉しい気持ちに弾む胸を、両腕に抱えた図鑑で必死に押さえつけながら。

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