白い花が咲いたなら
そ、そうだ。安心してる場合じゃなかった。
この緊張の原因が隣にいるんだった。
あたしは動揺を悟られないように、強気な口調で返事をした。
「意識なんてしてないけど? そんな風に見える?」
「見える」
「してないもん! 意識なんて!」
「じゃ、ひょっとして嫌がってる?」
今までずっとこの状況を楽しんでたみたいな近藤くんの声のトーンが、下がったように感じた。
「俺と一緒にいるとこ見られるの、嫌?」
背の高い彼が、少し首を傾げながら聞いてくる。
もうほとんど沈みかけた空の濃い夕焼けが、彼の瞳に翳を落としていた。
その表情がなんだかとても寂しげで、あたしは慌てて首をブンブン横に振る。