白い花が咲いたなら

 そんなことが言いたいんじゃなくて!

 あたしは……!


 ―― キュッ……


 いきなり近藤くんが、あたしの手を握ってきたから。


 あたしは、口から飛び出しかけた言葉を思い切り飲み込んでしまった。


「…………」

「嫌なら振り払っていいから」



 あたしは無言で視線を下ろした。


 そして近藤くんの大きな手にしっかり包まれている、自分の手を見た。


 涼しさの増した日暮れの空気の中で、彼の手の感触が沁み込むように伝わってくる。


 とっても、とっても温かくて。


 キュウゥッて、心臓が鳴って。


 その温もりも、心臓の痛さも、全然イヤじゃなくて。


 だから……振り払えないよ。

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